《月経トラブル・月経困難症(生理痛)》
生理痛とは、生理の時に子宮が収縮したり、子宮の周りの腸の動きが活発になったりするために起きる下腹部の痛みや収縮のことです。人によっては吐き気、頭痛、下痢や便秘などの症状が現れることもあり、生理に伴って起こるこれらの症状をまとめて月経困難症といいます。痛みの程度には個人差があり、生理女性がある女性のうち生理痛がある方は80%、日常生活に差し支えるほどの痛みのある方は約30%、鎮痛剤を飲んでも寝込んでしまう方は約6%いると言われています。
生理痛には大きく分けて、特に病気などの原因がないのに起きる機能性生理痛と、子宮内膜症や子宮筋腫・子宮腺筋症などの病気が原因で起きる器質性生理痛の2つがあります。
機能性生理の原因は大きく3つに分かれます。、
①子宮が未熟で子宮頚管が狭いため、子宮から押し流されてくる血液がスムースに流れない(妊娠や出産を経験していない10~20代前半に多い)
②子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンというホルモンが支給を収縮させ、血液を外に押し出す働きをしているが、体質的にこのホルモンの分泌が多いと子宮の収縮が強くなる
③冷房や薄着などで体が冷えることによって血液循環が悪くなり、血液を押し出そうとしてプロスタグランジンの量が増えるためです。
東洋医学では、痛みが起きる原因は2つです。 一つは、“不通則痛(ふつうそくつう)”と呼び、気血津液(きけつしんえき)など身体に必要な物質の巡りが悪いために起きる痛みであり、もう一つは、“不栄則痛(ふえいそくつう)”と呼び、子宮における栄養状態が悪いために起きる痛みです。まずどちらのタイプかを見極めることが大切です。痛みがあるときだけ、痛みを緩和する漢方薬を一時的に飲んでいただくことも可能です。
症例1:生理痛(不通則痛)の改善
30代女性、主訴:鎮痛剤を飲んでも効かない生理痛
中学校の頃から生理痛があり、鎮痛剤が手放せません。1日~2日がピークで、ひどい時は学校を休んでいました。今は仕事をしているので生理休暇をとることができるのですが、閉経までこの状態が続くのかと思うと憂鬱です。鎮痛剤が効かないこともあり、そんな時はおなかを温めながらじっと我慢しています。生理痛とともに月経前症候群(PMS)もあります。病院で診察してもらったのですが、特に病気は認められないと言われ、強い鎮痛剤を出してもらっています。
困っている症状
・生理痛がひどく毎月辛い
・生理前に胸が張り、イライラがひどくなる
・生理前には、下腹部が張った感じが気になる
問診と気功(糸練功)で確認したところ、お困りの症状は、肝(かん)の機能(肝気)がスムーズに働いていないため、気の巡りが悪くなり起こった症状だと考えられます。
症状を改善するために、
①気の巡りを良くする漢方薬
②血行を良くする補助薬をお出ししました。
また頓服として、痛みを緩和する漢方薬をお出しして、生理痛があるときに飲んでいただきました。
飲み始めて1回目の生理はほとんど変わらなかったのですが、頓服を飲むと少し楽になりました。3ヶ月目くらいから痛みが軽減してきて、鎮痛剤の量が減ってきています。痛みが完全に無くなったわけではないのですが、会社を休むほどの激痛ではなくなってきています。どのタイプにしても冷えると悪化するため冷えに対する養生が必要です。
症例2:生理痛(不栄則痛)の改善
20代女性、主訴:生理中や生理後半に下腹部がしくしく痛みます。冬場に悪化する気がします。もう少ししたら妊活を始める予定なので、今のうちに体を整えたいと思っています。生理痛も楽にしたいです。
困っている症状
・生理が終わるとフラッとすることがある(貧血)
・お腹がシクシク痛む
・妊活できる体に整えたい
問診と気功(糸練功)で確認したところ、お困りの症状は、「気血両虚(きけつりょうきょ)」証で、「気虚」と「血虚」が同時に生じている状態が原因だと考えられます。赤ちゃんを産むのに適した体の状態に整えるためには、この原因を改善することが必要です。
症状を改善するために、
①気と血の両方を補う漢方薬
②気と血を作り出す機能を高める漢方薬をお出ししました。
飲み始めてからすぐに食欲が出てきました。生理痛はすぐには改善しなかったのですが、徐々にシクシクを感じる頻度が減ってきています。3か月くらいたってから、生理が終わった後の貧血が無くなりました。妊活のために、少し処方を変えて体質改善の漢方薬を服用中です。