《更年期障害》
一般的に閉経を迎えるのは50歳頃であることから、45~55歳頃が更年期にあたります。この時期に起こる不調を「更年期症状」、その症状が重く日常生活に支障をきたす場合を「更年期障害」と呼んでいます。女性は40代の後半から卵巣の機能が衰え始め、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が減少していき、閉経を迎えることでさらに急激にエストロゲン分泌量が落ち込みます。その影響でホルモンバランスや自律神経のバランスが崩れて心身に不調をきたしてしまうのです。
主な症状に以下のものがあります。
1.血管運動系の症状:ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、寝汗、手足の冷え、動悸、息切れ、高血圧など
2.精神神経系の症状:気分の落ち込み、イライラ、情緒不安定、不眠、頭痛、倦怠感、集中力の低下、物忘れ、めまい、耳鳴りなど
3.消化器系の症状:食欲不振、吐き気、胃もたれ、お腹の張り、便秘、下痢など
4.運動器官系の症状:肩こり、腰痛、関節痛、手足のしびれ・こわばりなど
5.生殖・泌尿器系の症状:月経異常、生理不順、頻尿、残尿感、陰部のかゆみなど
6.皮膚・粘膜系の症状:乾燥、かゆみ、抜け毛、 シミ 、発汗異常、ドライアイなど
更年期障害が原因の場合は、症状に対する対症療法と、更年期障害に対応する漢方治療の両方を行うことが有効です。
東洋医学では、「気(き)=生命活動のエネルギー源・血(けつ)=全身を巡る血液やその栄養・水(すい)=血液以外の体液」の3つの要素がバランス良く体内を巡ることで、健康が維持されると考えます。
更年期ではこのうち特に気・血がバランスを崩しているために、心身に不調をきたします。
- 気虚(ききょ)
気が不足している状態で、疲れやすい、やる気が出ない、憂鬱な気分になる、集中力がないなどの症状が出ます。
- 気滞(きたい)
気の巡りが悪い状態で、イライラや情緒不安定になりやすくなります。また、お腹の張りやのどの詰まり、吐き気、不眠症などの症状が出ることもあります。
- 血虚(けっきょ)
血が不足している状態で、栄養不足や貧血、月経困難症、肌のかゆみ・乾燥のほか脳にも栄養が回らずに物忘れが多くなったりめまいが起こったりします。
- 瘀血(おけつ)
血液の流れが悪くなっている状態で、手足の冷えや肩こり、頭痛、シミやニキビなどの肌荒れ、不正出血や生理不順、ひどい生理痛などの症状が起こりやすくなります。
- 陰虚(いんきょ)
気・血に不調が生じると、最終的には水の不調も引き起こすとされています。必要な水分・潤いを保持する力が低下している状態で、余分な熱が生じやすくなり、のぼせやほてりなどの症状が出やすくなります。
症状改善のためには①~⑤の各種症状に対応する漢方薬をベースに、オリジナルの調整を行います。
症例1:更年期障害(情緒不安定・発汗異常)
50代女性、主訴:情緒不安定と発汗異常
少し前から突然カーっと暑くなり、頭から汗をかくようになりました。夏でもないのにお化粧がすぐに落ちてしまいます。精神的にもイライラしたり、反対に急に色々なことが不安になったりします。夜目が覚めた時に、不安で眠れなくなることがあります。そのせいか、食事も美味しく感じられません。病院で、加味逍遙散と精神安定剤を出してもらって飲んでいるのですが治りません。このような症状は、漢方薬では治らないのでしょうか?
困っている症状
・頭に汗をかいてお化粧ができないこと
・イライラしたり、逆に不安で眠れなくなること
・食事が美味しく感じられない
体質と生活習慣
・健康診断の結果は特に問題ない
・一日3食きちんと食べているが美味しくない
・スポーツクラブに入っているが、行く気になれない
・夜中に起きると眠れない
問診と気功(糸練功)で確認したところ、お困りの症状は気が不足して、巡りが悪くなったことによる自律神経の乱れが原因と考えられます。
症状を改善するために、
①気を作る臓腑を補うお薬
②気の巡りを良くする補助薬をお出ししました。
服用をはじめてから、2週間くらいで徐々に食欲がでてきてスポーツクラブに行けるようになりました。そのせいか、徐々に夜もよく眠れるようになってきています。服用後2か月たって頭の汗は、以前ほど気にならなくなりました。
症例2:更年期障害(動悸・血圧上昇)
50代女性、主訴:動悸と血圧の上昇
ここ1年くらい急に動悸がして、心臓が苦しいことがあります。病院で検査を受けたのですが、心臓に問題はないと言われました。血圧は、上は正常値ですが、下はやや高いと言われています。動悸のある時に血圧を測ると、上が160を超えています。病院で大丈夫と言われても、動悸がすると不安でたまりません。安定剤を服用すると、しばらくして落ち着いてきます。漢方薬でこの症状は取れるのでしょうか?
困っている症状
・心臓がドキドキして苦しいこと
・血圧が急に上がって顔が熱く感じること
・普段でも急にドキドキしないか気になって、いつも心臓のことを考えてしまうこと
体質と生活習慣
・仕事中に急に心臓がドキドキし出すことがあり、安定剤を飲んでもなかなか症状が取れないことがある
・血圧が安定しないので、このままだと健康診断で引っかかるのではないかと気になる
問診と気功(糸練功)で確認したところ、お困りの症状は気と血の巡りが悪くなったことによる自律神経の乱れが原因と考えられます。
症状を改善するために、
①気の巡りを良くするお薬
②血の巡りを改善する補助薬を2種類お出ししました。
服用を始めてから、ドキドキする回数が徐々に減ってきています。安定剤はまだ飲んでいますが、飲むとすぐに効くようになりました。血圧はあまり気にならなくなったので、最近は計っていないそうです。2ヶ月くらいすると、夜中に目が覚めないようになってきています。