《高血圧の改善》
高血圧症に伴う症状には、頭重感、頭痛、めまい、耳鳴り、のぼせ、吐き気、嘔吐などがあります。
漢方薬局に相談に来られる方の大半は、病院の薬を飲んでいます。ところが、血圧のコントロールはできていても、高血圧に伴う症状が改善しなかったり、治療薬の副作用で悩んでいる方がいらっしゃいます。その方たちは、漢方薬の服用によってつらい症状を改善したり、血圧の薬を減らしたいという希望をお持ちです。
高血圧の治療薬は、以下の6種類です。
1.カルシウム拮抗薬(血管を広げて血液の流れをスムーズにして血圧を下げる)
2.アンジオテンシンⅡ受容体遮断薬(ARB)(血管を収縮させるアンジオテンシンⅡの作用を抑えることで血圧を下げる)
3.アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害) (アンジオテンシン変換酵素の働きを阻害することで、アンジオテンシンⅠからアンジオテンシンⅡへの変換を抑えて血圧を下げる)
4.利尿剤(水分の排泄を促すことで血液中の水分量を減少させ、血圧を下げる)
5.β遮断薬(心臓のβ受容体に作用し、心臓の拍動数を抑制することで血圧を下げる)
6.α遮断薬(血管の収縮を抑えることで血圧を下げる)
これを、症状に合わせて組み合わせて使うことが一般的です。
また高血圧の薬(降圧薬)の副作用には、めまい、ふらつき、頭痛、動悸、むくみ、倦怠感、発疹、便秘などがあります。
- めまい、ふらつき:血圧が急激に低下することで脳に十分な血液が行き渡らなくなることで生じます
- 乾いた咳:ACE阻害薬の副作用
- むくみ:カルシウム拮抗薬の副作用
- 便秘:カルシウム拮抗薬の副作用
- 歯茎の腫れ:カルシウム拮抗薬の副作用
- 日光に肌が弱くなる:利尿薬の副作用
- 痛風の発作:利尿薬の副作用
- 脱水や低カリウム血症:利尿薬の副作用
高血圧症の漢方治療は、西洋薬の薬物治療と異なり、血圧を直接的に下げるのではなく血圧が上昇した原因を治療します。そのため、症状が取れ体調が良くなった後、血圧の数値が下がるケースが多くみられます。
また、原因治療なので血圧が下がると漢方治療を終えても、高血圧症を再発することが少なくなります。漢方では、高血圧の原因の多くは、動脈硬化や血液の循環不良(瘀血)、体内の水分量が多いこと(水毒)、自律神経の乱れ(気逆)、また血液を送り出す『心』の失調や心との影響の深い『肝』や『腎』の機能低下や乱れなどによると考えます。
症例:高血圧
60代男性、主訴:足首のむくみと後頭部の頭痛
3種類の血圧の薬で血圧をコントロールしています。少し前までは、2種類だったのですが少しずつ血圧が上がってきたので1種類増えました。増えた薬を飲みだしてから足のむくみが気になります。
また、時々ですが頭痛で目がさめることがあります。鎮痛剤が効くときと効かないときがあります。漢方薬の服用で、この症状を治したり、血圧の薬を減らすことはできますか?
困っている症状
・徐々に血圧が上がっていることが不安
・薬の種類が増えてしかもむくみが出るようになった
・朝、頭痛で目が覚める
体質と生活習慣
・血圧の薬を飲んでいるが、頭痛がした時に血圧を測ると上がっている
・健康診断の血液検査で、血糖値・肝機能の数値など複数の数値が基準値より高い
・お酒が好きで週に5回以上飲酒している
・責任ある立場で仕事が忙しい
問診と糸練功で確認したところ、動脈硬化や血液の循環不良(瘀血)と自律神経の乱れ(気逆)が原因でこの症状が起こっていると考えられます。
症状を改善するために
①瘀血を改善する漢方薬
②気を巡らせてくれる補助薬をお出ししました。
服用後、血圧は安定してきています。頭痛も起こる回数が減り、血糖値などの検査数値も徐々に下がってきています。また漢方薬の服用と同時に、食養生で3食の食事に気を遣うようになりました。症状がなくなり、血圧の薬を減らせる状態になることを目標に漢方薬を継続中です。